松本 悠子名誉教授 Emeritus Prof. Matsumoto Yuko(2022年3月退職)

【最終学歴・学位・取得大学】 博士(文学) 京都大学

【専門分野】 アメリカ史、ジェンダー史

【研究キーワード】 アメリカ、人種、移民、ジェンダー、消費

【研究内容】 

専門はアメリカ史だが、なかでも、移民、人種、ジェンダーと国民国家の関わりについて関心を持ってきた。人種やジェンダーがどのように認識され、社会の中でどのようにその認識が使われてきたかを論じることは、グローバルなあるいは普遍的なテーマであり、極めて現代的な課題である。しかし、現代社会を人種やジェンダーの観点から理解するためには、目の前の現象を分析するだけでは不十分であり、歴史を紐解くことが欠かせない。これまでの研究では、19世紀以降のアメリカにおいて、アメリカ国民あるいはアメリカ市民という共同体の「我々」と周辺に置かれた「他者」の境界がどのように人種認識を基盤に作られてきたか、また境界の外に置かれた人々がどのようにアメリカ社会に対応しようとしたかを、アフリカ系アメリカ人、日系移民などを対象に論じてきた。さらに、そのような人種分類は、実際は社会によって作られたものであるにもかかわらず「血」の継承という想定に基づいているため、常にジェンダーと関わっている。人種とジェンダー規範がどのように交錯してきたかという問題にも常に気を配りながら、論じることを目標としてきた。もう一つの研究テーマは、国民という共同体を形作る上で、ジェンダーに基づく規範、役割分担あるいは意識どのような意味を持ってきたか、という問題である。アメリカの場合、19世紀末以降のジェンダー規範がどのようにアメリカ社会で作られてきたかを、白人中産階級と大量消費社会との関連で論じてきた。

現在は、このような問題意識の延長線上で、アメリカとヨーロッパの人種認識の歴史的比較をすることを目標としている。第1次世界大戦は、ヨーロッパの戦場とその銃後で、ヨーロッパの普通の人々とアフリカ、アジア、そしてアメリカのアフリカ系アメリカ人が初めて出会った戦争でもあった。ヨーロッパ諸国の植民地支配の基盤に人種主義があったことは自明である。しかし、植民地に行ったことのないヨーロッパのおおかたの人々は、第1次世界大戦における出会い以後、どのような人種認識を育てたのであろうか。アメリカが奴隷制以来構築してきた人種認識とフランスやイギリス、ドイツの普通の人々の人種認識はどのように交わり、どのように異なったのであろうか。また、戦場や銃後の労働者としてかり出されたアジアやアフリカの植民地の人々、アフリカ系アメリカ人は、ヨーロッパ社会を実際に体験して、どのような自己認識をもったのであろうか。ジェンダーの視点を加えながら、このような問題を論じることによって、ポストコロニアル時代の欧米の人種認識とその影響の歴史的起源を明らかにすることができると考えている。

【主要な論文・著書】

“Community Building in Harlem: The New York Age in the 1910s.” The Japanese Journal of American Studies, 31, 2020

「第1次世界大戦下フランスにおける労働・人種・ジェンダー」『中央大学経済研究所年報』第52号, 2020

“Americanization and Beika: Gender and Racialization of the Issei Community in California before World War II.” in Trans-Pacific Japanese American Studies eds. by Yasuko Takezawa and Gary Y Okihiro, University of Hawai’I Press, 2016

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